滋賀県自治会連合会で講演

ボストンプラザホテル草津のケネディルームで開催された平成28年度滋賀県自治会連合会研修会において「地縁組織の可能性―新旧住民自治組織の違いを超えて―」と題した講演を行いました。

滋賀県自治会連合会は滋賀県内4市1町(大津市、守山市、近江八幡市、栗東市、竜王町)の自治連合会が加盟している組織です。今年度は栗東市が事務局を担うことになったようで数ヶ月前に講演の打診がありました。

単位自治会→学区自治会連合会→市町自治会連合会→県自治会連合会→全国自治会連合会というように組織があるところが多いのでしょうか。

滋賀県には19の自治体(13市6町)あるので、4市1町の加盟というのは不思議ですが、実は全国自治会連合会も加盟状況は芳しくありません。全国自治会連合会は2016年度に加盟組織数は33であり、都道府県単位では加盟せず、市単位で独自に加盟しているところもあるという状況です。


滋賀県自治会連合会には大きな集まりは、総会を除くとこの研修会・交流会が年間の最も大きな集まりのようです。

ホテルで実施され、研修会――つまり私の講演――の後には交流会が待っているわけです。ところが、研修会のみに参加する方は十数名いるものの、交流会のみに参加する方は皆無であり、構成員の熱心さが見られます。

参加者はおおよそ80名ほどだったかと思います。当番の栗東市からは多くの自治会長が来られていました。

講演は1時間弱で、冒頭に住民自治組織について地縁型とテーマ型、あるいは協議体型など「○○型」という分類の表現がたくさんあることを紹介しました。そして、これらが現場においては不要な混乱を引き起こすことがあると説明しました。

とりわけ、新しい住民自治組織――まちづくり協議会、自治振興会、地域振興協議会などの地域内分権組織――と従来の自治会・町内会との機能差をめぐる議論が混乱を引き起こすことが多く、本来、新旧両者が地縁性もテーマ性も有しているにもかかわらず、旧=地縁、新=テーマ・協議体という実態とは異なる区分がその原因となっています。

制度の草創期には、新旧組織の違いをめぐる議論はそれなりに意味のあるものですが、制度構築が済み、既に制度を前提に多くの実践がなされている現在、(ありもしない)新旧組織の本質の差を論ずるよりも、せっかくある新旧組織をどう活用していくかを考えていくことが建設的であると論じました。こうした議論は私のここ数年の研究成果に基づいたものです。

当日の研修会は自治会長あるいは自治連合会の幹事として現場で活動されている方たちばかりが参加していることも踏まえ、講演の後半は架空の――しかし、よくある――エピソードを交えつつ、新旧住民自治組織がそのケースにどう向き合うことが可能であるかを具体的に示しました。

示したエピソードはここには紹介できませんが、次の4つのテーマです。

  1. 自治会に入り活動に貢献をするのは当たり前のことだろうか
  2. 自治会活動の大御所たちの経験はどう活用すれば良いのだろうか
  3. 若者世代と自治会役員の世代との差はどう乗り越えれば良いのだろうか
  4. 自治会活動が負担だと捉えられてしまう状況をどうしたら良いのだろうか

これらはいずれも、多くの自治会長が日々直面している課題であり、研修を一度受けたからといって、個別のケースが解決するものではありません。

講演は受け身で聞くよりも、講師がいうことに「え?」と疑問や怒りを感じた方が自身の考え方の特性に気がつきやすいため、今回は敢えて議論を呼ぶような(controversial)話をいくつかしました。その「敢えて」を前提としつつ、講演の振り返り部分を少し紹介しましょう。

  1. 常識はたくさんある。自分とは異なる常識の人に「非常識だ」と嘆いていても効果は望めない
  2. 暗黙の了解が成立しない。必要な情報は努めて明示し共有する
  3. 住民自治の建前を理解し遂行してみる。自分たちで自治をする気がない地域では自治会活動を諦めるのも、金銭的な解決(業務委託)に頼るのも一つの手だ
  4. 住民自治が守れるのであれば組織は自治会でなくても構わない

こうしたまとめは、思った以上に反応をいただきました。「研修会というから、大学の先生の現場がわかっていないような話を聞いて終わりかと思ったらエピソードがリアルでおもしろかった」「まとめには納得がいかないことが多かったけれども、自分だったらどうするか、考え始めるきっかけになった」などなど。

また、講演の最後に大学の有効活用法も紹介しました。学識経験者として委員長に大学教員を据えるだけではなく、共同調査、ワークショップのデザイン、CBLやサービスラーニングなど学生の公式な巻き込みといったさまざまな方法を、教員の専門性に合わせて協働で試していくとよい、という話です。そのおかげか、交流会の場でさっそくいくつかの地域で講演のご依頼などをいただきました。

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